【あとがき解説】キリシュタリアとMADを作った話【オリュンポスMAD振り返り】

今年もAnipafeというイベントに参加をさせて頂きました(今回もFGO)。
イベント詳細


実は元々はイベント向けのカスタマイズという感じでもう少しわちゃわちゃしてる系のFGOMADを作ろうとしていたのですが、最新章プレイ後とあるキャラクターとの幻覚が中々収まらずそのままこちらに舵を切った次第です。

昨年も書いたので今年も、という訳で以下解説とあとがきをば。

FGO最新章の内容を含む為ネタバレ注意。








・登場人物、シナリオ背景に関して

ここはFateシリーズ、FGOの全てを語り出すととても終わらないので掻い摘んでお話します。説明を受けても分からないという人も多いと思いますのでふんわり把握して貰えれば幸い。シリーズプレイ済みの方はおさらいということで。


FGOは章立てのスマートフォンアプリとして更新が続いており、本MADの時系列としてはその最新章という認識でOKです。

現在進行中のシナリオはFGO全体の2部○○章といった感じです。
2部の大まかなシナリオ振り返りはこちらもご活用いただければと思います(隙あらば宣伝)。





最新章は=5章。舞台となる歴史(異聞帯)は神代のオリュンポスになります。

登場人物は同章に登場する勢力のグループ分けとして、

1.主人公(プレイヤー)&マシュ(主人公サイド)




2.破神同盟/味方となる英霊達(現地の協力者たち)




3.キリシュタリア・ヴォ―ダイム&サーヴァント・カイニス(対立するマスターとその相棒)


と、本MADに限ってはキリシュタリアを構成する要素の1つとして説明している為出番はごっそり削っていますが、彼の仲間たち(通称:クリプター、Aチーム)





4.オリュンポスの三神(デメテルアフロディーテ、ゼウス)、異星の神とその使途(現地の敵対勢力)






概ね上記の4つの陣営に分かれます。


既にご視聴頂いた方はなんとなく分かるかと思いますが、本MADでは主人公に加え、ライバルポジションのキャラクターであるキリシュタリアの2人をメインの軸に据えて制作しています。



・選曲とコンセプト

今回選曲となったのはkemuさん作詞作曲、PENGUIN RESEACHさんがカバーする「敗北の少年」です。(ちなみに元々は同アルバムの「雷鳴」という曲が真っ先に選曲の候補となっており、そこから同アルバムに収録のこちらの楽曲に流れた感じです)。
「勝利」と「敗北」というのはFGO2部における1つのキーワードだと思っているので、悩んだ末今回はこちらの曲を選びました。

冒頭15秒は前作の選曲の同アルバム内に収録されている「永世のクレイドル」のピアノソロバージョン。こちらは後述ですが、構成の都合上どうしても冒頭にパートを作りたかったので差し込みました。



これは私自身の傾向なのですが、選曲を決めると作り始める前に同じ選曲で作られているMADをしばしば見漁ります。今回は選曲の敗北の少年がMADの選曲として比較的メジャーだったこともあり観るに困らなかった訳ですが、


見事に少年が主人公の作品がほとんどだ!
※曲名に「少年」って入ってるし主人公が少年なのは自然です。


ならば自分は敢えて少年以外を軸に作ってみたくなるのが捻くれたMAD製作者の心情です(捻くれてますね)。

少年が主人公になるのがスタンダードな選曲において、主人公のライバルにあたるポジションのキリシュタリアという青年を軸に据えて作ることを本動画のコンセプトに設定しました。


実際のところでは曲選びの段階では主人公とキリシュタリア両方に歌詞が掛かる前提で考えていましたが、途中からは主人公サイドもどちらかというと「キリシュタリアを構成する重要な1要素」としての構成の仕方をしています。



・構成

基本的にはストーリートレースのMADなので各パート時系列順に沿って進んでいく内容になりますが、今回は私自身が手法として意識していたことを少しだけ。


ここ最近投稿したMADの幾つかで起承転結とは別にPREPというプレゼン等で用いられる手法をしばしば取り入れ、起承転結と組み合わせて構成したりしています。


P(Point:要点) ⇒ R(Reason:理由) ⇒ E(Example:事例・根拠) ⇒ P(Point:もう一回要点)

こんな感じです。

詳細を省いてざっくり言うと、

「冒頭にまず最も肝要な言いたい要点(と≒になる要素)、全体の主旨を言う」

「終盤までの間にそう足りえる理由・根拠を示す」

「以上を踏まえて要点を回収、結論」

みたいな作り方です(履行できているかは人によって見え方も変わってくると思うので、少なくとも自分の中ではイメージを通すという感じ)。


このMADでいう要点は
「キリシュタリアというキャラクターそのもの(主人公との対比、目的etc)」 になります。

導入部分は曲自体に原曲よりも極端な緩急を付けることで視聴する方を引き込むことと、この要点の要素を断片的に投げかけ、伏線とする為に後付けで設けたパートといった感じですね。

合間合間で主人公とキリシュタリアが交互になるシーンに関しては台詞回しについても対を意識しつつ、ただほんの少しキリシュタリアが主人公の「先を進んでいる」感じは意識しつつ挿し込んでいます。この辺りは2人の関係性からの説明ですね(本質的には似た者同士なものの、対立は避けられない)。







「これは私の冠位指定」という台詞は実際に本編でのキリシュタリアの台詞です。
直訳の「This is my Grand Order.」は我々がプレイする
   「Fate/Grand Order」というアプリ名への対も意識。



そして2回目の要点。冒頭で出したキリシュタリアが如何に主人公めいていたのか、証明しようとしたものがなんであったのか。そしてその最期までを見せるパートになります。

「"美しいもの"を証明する為に」⇒「"人の価値"を証明し続ける為に」




最後に結。シナリオを終えて既にいなくなった者たちから、答えを選択した主人公の旅路へのエールで〆。これを以て主人公たちは次の章に臨む、といった終わりとなります。


大筋は以上にて。

PREP自体は恐らく既に自然にやられている方も多数いると思いますが、ノウハウとして認識しておくと自分自身の作品の構成の「一貫性」の部分を客観的に観るフックになるかもしれません。※特段マストな方法という訳ではなく、あくまでも手法の一つとしてお考え下さい。



また、最近密かにマイブームになっている構成の手法を1つ。

私真理が勝手に「存在しない記憶」と呼んでいるものがあります。



ざっくり言うと、
ストーリートレースのMADでさり気無く投稿者の完全な妄想のパートを構成に差し込む
みたいな感じの構成の仕方です。これはそもそもがifのストーリーの構成とは違い、ストーリーの行間を妄想で補完するというイメージです。


ちなみに他の方のMADで存在しない記憶と思われるものを観た時は
お、いい存在しない記憶キメてるねぇ!」とか言ってます(※嘘です)。


前回のMADでは英霊マンドリカルドの独白パート、
今回のMADでは以下の写真がそれに該当します。



本編ではキリシュタリアが「一緒に世界を救いたかった」と述べたのはAチームという括りで、キリシュタリアは主人公の背を押しこそしたものの、そこに主人公は含まれていませんでした。本編でも彼らが隣同士に立つことは決して無く、存在し得ない写真です。

だけどこっちはお前と一緒に世界を救いたかったんじゃい!!!!!!!!!!

現場からは以上です。

違和感の有る無しに関わらずそもそも存在しないシーンをストーリー内に混入させる為、ソース選びやシナリオの部分で被った際にも大なり小なりオリジナリティが出るのが1つのメリットかなと思っています。


ちなみに細かい部分ですが写真の右下には日付が刻んであります(後から見たら非常に見え辛かったので気付く人いないだろうという自戒)。
その日付は「2017.1.1」。FGOのリリース後最も早く終局特異点を攻略し、初期からプレイしていたユーザーであれば無事に人理修復が成った直後の日付になります。

存在しない記憶を使ったパートに関しては個人的に、FGOプレイしてない人には「こんなシーンがあるのね」と違和感なく思わせたら。プレイしている人には「こんなシーンあったね。あったね?」と思わせたら勝ちです。


・テーマ

青年だってあと10年若ければ少年です。みたいな屁理屈を捏ねながらもコンセプトを設定し構成を練り、その過程でコンセプトとは別にテーマというのも設定しました。

「主人公になれなかった青年から主人公になった少年へ」


かつて少年として敗北を経験し、這い上がり、青年となったキリシュタリアから敗北した少年少女であるFGOのプレイヤー、ひいては現実の私たちへのメッセージという形で曲の解釈を変えた形で着地しました。

敗北の少年という曲自体も重ねて聴き、歌詞から個人的に「少年」以外にも「少年に語りかける誰か」といる存在がいる解釈を取った次第です。

平凡を謳え

 現実を謳え

 我々は泥を這いつくばるものである

 我々は地を這うものである

 人間とは負けて当然の生き物である

 故に、一度や二度の敗北で人の価値が落ちることはない


一部本編の台詞の要約になりますが、概ねこういった内容がキリシュタリアからのテーマ兼メッセージであるとイメージしました。負けや挫折は人間である以上当然のこと。何度凹んでも這い上がろうぜ、というやつです。

なんか1つの人生観みたいですね。

以下はライターの那須きのこ氏のブログからも抜粋。―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

そう、人間は正解を選べない。

いつだって大切なのは、「この後、何をするか」なのですから。

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・おわりに
以上、本MAD自体はFGOをやり込んでいる人向けのMADだと思っていますが、そうでない方にも何かしら伝わる部分があったなら幸いでございます。
(Anipafe自体は今年は例年以上に全体のレベルが高く混沌としているので、欲を言えばとりあえずキリシュタリアやカイニスというキャラクターは覚えて帰ってくれれば本望です。)


↓おまけ(製作期間中に元気をくれた動画)



長くなってしまいましたが今回はこの様なところで。
スィーユーアゲイン。